穂村弘タイム 2006年04月08日03:41(mixi日記より)


※mixi日記からお引っ越し

以前日記で「酒の勢いで衝動買い、面白かった本』
の中で紹介した歌人@穂村弘の本を新たに数冊読んでみた。
ので穂村弘タイムです!

仕事場で本好き同僚に「弱強くて面白くない?」と聞くと
「僕はエッセイ系なら、もっと黒いのが好きですね」
「さいばら周辺とか?」
「おぉ! そうです! ゲッツ板谷なんて最高ですね~」
なるほど。好みは人それぞれ。
「でも僕、エッセイって、
 何を得ればいいのか分からないから実は苦手です」
なるほど。
それは正しい意見でもある。
では穂村さんの文章で、得られるものを探してみよう。

  “無色透明な孤独、贅沢な退屈、強すぎる自意識、
   そんなものに取り囲まれ、
   私たちは身動きがとれなくなっている。
   日常の真空地帯にすっぽりはまりこんで
   毎日をやり過ごすのに手一杯で
   本当に夢中になれる何かが見つかったら、
   なりふり構わずそいつをやってやって
   やりまくるんだが、などと思いながら。
   だが、何かを見つけるの何かっていったいなんだ。
   これだというものっていったいどれなんだ。
   自分の両腕ではじめて世界の扉をひらこうとする時、
   それは驚くほど重たく感じられる。
   絶望的に重たくて堅い世界の扉をひらく鍵、
   あるいは呪文、いっそのこと
   扉ごと吹っ飛ばしてしまうような爆弾が
   どこかにないものだろうか。

   経験的に私が示せる答えがひとつある。
   それは短歌を作ってみることだ。”


短歌だったんだ。


扉を吹き飛ばす爆弾は短歌だったんだ。

得た。

得たぞー!!

今の心境を込めて、試しに爆弾を作ってみる。


やわらいだ 木漏れ日の下 猫あくび
丸まる背中を 押せ花吹雪



穂村弘さんはすんごく弱くて強い、不思議そうな人。
初の歌集を出す時、
大島弓子さんに帯を頼みたかったらしい。
おぉ
大島弓子。
初の歌集、自腹で知る人知らない人に郵送しまくったらしい。
おぉ。
知らない人にも郵送。
初の歌集、死んだ人にも送ると熱くなって止められたらしい。
「どうやって」
そりゃそうだ。
初の歌集、出した後のパーティーにて。

  “次は、穂村弘。ほむらひろし、
   おれだ。おれおれ、
   ぶ、ぶ、ぶた、ぶたい、ぶたいにあがらなきゃ、
   と緊張のあまり口がぱくぱくする。
   「こんにちは、穂村弘です、僕は今、奥さんも恋人も
   いなくて、とてもさみしいです、仲の良い恋人同士を
   見ると胸が痛くなったり、頭が痛くなったりします、
   今日は、仲の良さそうな恋人同士が何組もいるみたい
   ですね、あそことあそこ、あそこにも、あそこにも、
   あそこにも、あっ、あそこにも」と客席を指さすと
   恋人たちは笑いながらちょっと怖そうに僕を見た。
   それから僕は短い歌を詠んだ。
   「あした世界が終わる日に」という詩だ。

   あした世界が終わる日に
   一緒に過ごす人がいない
   あした世界が終わる日が
   夏ならいちごのかき氷
   舌をまっかに染めながら
   輝く雲を見ていたい
   
   あした世界が終わる日に
   一緒に過ごす人がいない
   あした世界が終わる日が
   冬ならメリーゴーランド
   つやつや光る馬たちの
   首を抱えて廻りたい
   
   あした世界が終わる日に
   一緒に過ごす人がいない
   あした世界が終わる日が
   今日なら蝶のアロハシャツ
   汗ばむような陽炎の
   駅であなたと出逢いたい

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