恥ずかしげもなくアップ! いや、恥ずかしいです・・・
・・・・・マゾ的にアップ・・・・・・(おい!)
半年前、Pと『ゴドーを待ちながら』を話した際に
「ちょっと我らも戯曲書いてお互い見せ合おうぜー」
これが始まりでした。
話をした2011年9月に自分はここまで書いて見せました。
Pから戯曲の原稿はあがってきませんでした。
ピピピ・・・
(この展開、なんだかデジャヴ感・・・。
そうだ、「献血いこうよ!」てYに誘われて
仕方なくついていったら最終的に私だけ献血、
あの展開に似ているんだ!)
密教の話を読んでいたら、なぜかフト
この書いた戯曲を思い出した。
ので、ついでにアップしておこうっと。
□タイトル『正義屋さん』(2011年9月/途中抜けあり)
はしもと作
□登場人物
・店主(男/30代~40代/大泉洋なイメージ)
・客0(男/30代/若さが残る)
・客1(男/50代/恰幅よい/少しトロい)
・客2(女/40代/神経質そう/キツい)
・女性(女/20代/女性らしさ控えめ/ハキハキ)
ー1ー
明るいお店の中。
客1:(ドアから顔を覗かせ、キョロキョロと不安そうに中を見回す)こんにちは・・・
客0:(寝ている)
客1:こんに・・・(客0の存在に気づき、ハッ、としてそちらに歩みよる)
客0:(寝ている)
客1:(客0の横に立ち)すみません。
客0:(寝ている)
ジャーと水洗トイレを流す音がして、奥/舞台袖から店主がスタスタと出てくる。
店主:あーどうもどうもいらっしゃいませこんにちはこんにちは。
客1:(少し驚き、じっと様子を見ている)
店主:驚かしてすみませんねえ、あ、その人はお客さんなので、触れないようにお願いしますね。
客1:あ、お客さん・・・ね、寝ていますね・・・
店主:うん、そう なんです。彼にとっては、その睡眠こそが、あるべきものだそうです。
客1、衝撃を受けた表情をして、固まる。一瞬の空白。
店主は手を拭いている。
客1:あ、あ、あ、あ、あるべきもの・・・!(声を振り絞るように)
店主:うん、あるべきものだそうです。(深く頷いて)
客1:あ、あるべきもの・・・!
店主:うん、あるべきものだそうです。
客1:あ、あああ、あるべきもの・・・!
店主:うん、あるべきものだそうです。
客1:あ、あるべ・・・!
店主:うん、もうこのループやめませんか。
客1:ああ、すみません、ちょっとショックを受けてしまって、ということは、やはり、あの、
このお店はそうなんですね、私の聞いた話は本当だったんですね。そうだったんだ!!
ああ、なんてことだろう、本当にあったなんて!!いや、でもまだ分からない、そうだ。
店主:(黙って頷いて聞いている)
客1:まだ喜ぶのは早計だ、だが今彼は「あるべきもの」と言った・・・やっぱりそうなんだ!
店主:(黙って頷いて聞いている)
客1:やっぱり、そ・・・! ・・・? あ、あの・・・
店主:(黙って頷いて聞いている。いや、つまり聞いていない)
客1:・・・あの・・・
店主:(首だけ振っている)
客1:・・・えっと・・・
店主:あ、もうよかったですか。
客1:あ、ええ、もう大丈夫です。あの・・・念のため、確認なんですが、ここは、その・・・
店主:当店は、あるべきものをあるべきところにあるようにする、それ即ち「正義」ということで
「正義屋さん」と世間では呼ばれているお店です。
客1:やったー!!!!!ああ、神よ・・・!あなたは私を見捨てていなかった・・・!
そうだ、いつもあなたは私を(ガッツポーズを決めたり、ひざまづいたり、激しく動く)
店主:(ソファに座り、客1と時計を見比べる)そろそろ延長料金が発生しますよ。
客1:・・・。(慌てて姿勢を正してソファに腰掛ける)いやあ、つい嬉しくて。すみません。
店主:いえいえこちらこそ、つい飽きてしまって。すみません。
客1:・・・・・。(ジトーと店主を見るが、店主は何食わぬ顔)
客1:あの、ところで、その、あるべきものをあるべきところにあるようにする、というのは
その、「バッグが欲しい!」といった物理的なサポートや、
「ペットを探して欲しい」といった探偵に頼むようなものとは違って、その、
店主:先日、「自分には三ツ目があるべきだ」というお客さんも来ましたねえ。
客1:か、叶えたんですかっ!?
店主:ええ。「自分は他の人とは違うはずだ」と、自己評価が高そうな坊ちゃんでした。
そのうちメディアに、出るんじゃないかなあ? 三ツ目自体を後悔していなければ。
客1:「ええ。」って・・・三ツ目?!! 三ツ目ですよ?!
店主:でもおでこですよ、おでこ。
僕だったらねー、どうせ三ツ目なら、手のひらがいいと思うんですけどねー、
ちょっと高い場所もすぐ覗けるし、スカートの中だって・・・いしし・・・
客1:ちょっと。
店主:おでこの真ん中に目を追加するなんて、もう、完全に漫画の読み過ぎですよ!
まあ彼にとっては、それが「あるべきもの」だと言うんだから、いいんですけど。
客1:三ツ目・・・三ツ目・・・
三ツ目の彼について熱弁を続ける店主。
黙りこくり、だんだん肩が落ちていく客1。
店主:あれ?どうしました?
客1:いや・・・何だか・・・ご相談したかった自分の「あるべきもの」なんて、
世間の波にさらされたどうしようもなくつまらないものだなあと・・・その・・・
思えてきまして・・・・・・三ツ目・・・
店主:XXXXXXXXXXXX
XXXXXXXXXXXX
(客1:「職」が欲しい。「子供」が欲しい人が置いていった「職」。引き換えは「髪」)
ー2ー
ソファーの上でポケーとしている店主。
店主の前には、客2が座っており、コンコンと何かを語っている。
客2:聞いてます?
店主:ええ。
客2:でしたら、私にとっての「あるべきもの」とは何だとお考えです?
店主:んん・・・その・・・それは先ほども申し上げたとおり、
当店は適性検査や占いのような仕事とは一切関係ありませんので。
「あるべきもの」は、あなたから頂かないと、私には何もできないんですねえ。
客2:でも!今まで聞いた話を総合すれば、私に「ないもの」が大体分かって、その中でも
これは「あるべきもの」だろう、と推測できるんじゃありませんか?!
店主:うーん・・・
客2:さては話を聞いていなかったんでしょう!!
店主:またまたあ。
客2:何ですかその態度!聞いてたなら、分かるでしょう!!
店主:やれやれ。聞いていましたよ、つまり、あなたはXXXXXXXXXXXX
(客2:「恋人」が欲しい。「セクハラ」にあってる人が置いていった「恋人」。引き換えは「」)
ー3ー
夜、店主が1人、お店の中を掃除しながらタバコをすっている。
不思議な光が差し込み、気づくとお店の中に1人の女性が現れている。
店主:なぜ「ないこと」を嘆くのか。それは「ないこと」を知ってしまったからでしょうねえ。
女性:そうだね、そうかもしれない。(子供のような無邪気さ。同性のようなあどけなさ)
店主:「ないこと」を知らなければ、「あるべきこと」だと渇望することもない。
女性:山田くんは私が死んで、悲しかった?
店主:もちろん。君がいない世界に生きることが辛かった頃もありましたよ。
そう・・・
「ないこと」を知ってしまうのは何故なのか。あるべきことを認識するから。
何故あるべきと認識してしまうのか。それは、自分以外の何かと交流するから。
女性:私と出会ったこと自体を後悔したのだろうか?
店主:(うっすらと寂しげに笑う)
動物だって交流していますし、「ないこと」を知ってもいます。
子供を生んだ親鳥が、ある日、巣に雛鳥がいないことに気づく。
敵に襲われたのか、巣から落ちてしまったのか、その原因はさておき
「ないこと」に気づく一場面です。
でも「ないこと」を嘆き、これは「あるべきこと」だと渇望し、主張することはない。
女性:そうだね。でも、実は、内心では思っているかもしれない。
店主:思っているかもしれません。ただ、それを表現できないだけかもしれない。
女性:人間は、表現できるから?
店主:うん・・・・・・。
もし鳥も「私の子供が消えた!誰か助けて!」とか「夫が取られた!憎い!」とか
表現できていたら・・・・・・そうですねえ、
周囲にその情報が広まっていって、同じ想いを持つ鳥たちが集まってきて、
「そういう場合はどうするか」というルールも出来ていくのかもしれませんね。
店主:それで、勝手に辛くなっていく。
店主:この世界にあって、あるべきものなんて、ひとつしかないのに。
女性:それは、耳が痛い。
店主:ねえ? 分かりますよね。分かってますよね本当は。でも夢や欲望があって。
夢や欲望があるから生きていける。なあ~~~んて、思ってる。
僕には欲望がなく、誰かの夢や欲望を叶えながら生きていけば、それでいい、
なんて思っていましたが、ちょっと欲望が出てきました。
女性:欲望! それは気になるなあ。(クスクスと笑いながら)
店主:「あるべきこと」を決めているのは、何でしょう?(すこし意地悪な笑顔)
女性:気になるなあ。(クスクスと笑いながら優しい笑顔)
店主:ではすぐ、その実現にとりかかりましょう。でも・・・成功するか分からないんですよ。
いつものように「引き換え」ではなくて、XXXXXXXXXXXX
女性:じゃあ、XXXXXXXXXXXX
XXXXXXXXXXXXXX
光が差し込み、女性の姿が消える。
店主は肩をまわし、周りを見渡す。
店主:さて・・・飛ぶ鳥は跡を濁さず。心の準備も掃除もすみました・・・。
客0:(いびきをかく)
店主:・・・いびき・・・(客0を見て、目をそらし、ごまかすようにウンウン頷く)
さて、それでは・・・
店主、目を瞑っていつものポーズをとる。
店主:ここに「あるべきもの」はこれ以上ありません。
ここに「なくてもいいもの」、それは僕のこの能力です。
差し出す代わりに、もうひとつ持っていってください。
ここに「なくてもいいもの」、それは・・・(欲望を増幅する人間の言葉)。
(最後の声はつぶやくようで、周りには聞こえない)
舞台が暗くなり、店主の姿が闇に消えていく。
店主:(お店の真ん中にポツンと立っている)う・・・(キョロキョロとする)
(横に置いてあった本を取り上げ、バサバサと見るが理解できない様子)
客0:(ノッソリと起き上がる)うう・・・
(店主の横に来て本を取り上げ、バサバサと見るが理解できない様子)
店主:んー。
客0:うお・・・うー・・・お!(机の上のバナナに気づいて飛びつく)
店主:ん・・・・・・・
あー!(客0の横に飛んで行く)おー!おー!(バナナをねだる)
客0:んむんむ・・・んー(仕方なさそうに、半分渡す)んむんむ・・・
店主:(バナナをもしゃもしゃと食べる)んむんむ・・・
客0:うあー!(と、食べ終わったバナナの皮を投げる)
投げたバナナの皮がランプにあたり、ランプが倒れてしまう。
倒れたランプの火が、周りの紙や本に燃え移っていく。
最初、2人はそれをボンヤリ見ているが、すぐに楽しそうに肩を揺らせる。
客0:う? ウー?
店主:うーあーあー・・・(肩を組んで、トコトコと外に出て行く)
2人が外に出る瞬間、舞台全体が白くまぶしく照らされる。
視界は白い光だけになり、幕はおりる。
ー終ー
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