『子どもを「人間としてみる」ということ』
(子どもと保育総合研究所/佐伯胖さん他)
読みやすいながら、とても面白かった。
保育(子育て)という視点以外にも染み込む内容。
世界初心者である子どもたち、
寄り添い共感する「YOU的他者」による
「THEY世界」への誘い。
「あなたは今、どういう苦しみを経験しているのですか」
共感とは一緒にわからなくなってあげること。
「あぁそうだよね」と腑に落ちつつも何となく刺激的だった。
この「共感」力が減りつつある??
っという点も気になりつつ、これは「自由の相互承認」
(苫野一徳さん『教育の力』における教育のキーワード)
につながるのかな、、、
以下は特に脳に残しておこうと感じた箇所の抜粋やまとめです。
――――――――
シモーヌ・ヴァイユ「隣人を愛するってどういうことなんだろう」
瀕死の状態で聖なる杯を守っている人がその杯を渡す人は、
水をくれたり何とか助けてあげようとしてくれる人ではない。
「あなたは今、どういう苦しみを経験しているのですか」
そう言ってくれる人に杯を渡しなさい。
聖なる杯の伝説ではそう言われている。
――――――――
保育園の設立から町おこしが始まったイタリアのレッジョ・エミリア市。
子どもはこれからの町そして国をつくる大切な市民だから。
町中に子どもたちのアート作品が大事な飾りとして使われている。
高級レストランでも子どもが入ってワーワー泣いていい。
貧困な子どもは安い月謝で入れて、お金持ちは高く待機児童化。
レッジョ・エミリアのスローガン
「if it is okey, it is the end.
if it is not okey, it is not the end.」。
――――――――
「子どもが本当にこれで納得していますか」を
保育者は常に気にかけましょう。
本当の芸術家は満足するまで何年でもかけてやる。この精神。
「遊び」とは、本気で、真剣に物事と関わる営み。
――――――――
「持続性(粘り強さ)」と
「予定調和ではない可変な保育の計画」。
――――――――
花になってくれるから大事にするのではなくて、
「今」、この種は、種として必死に生きようとしている。
それを大事にしましょう。
「こうなってほしいなー」という望ましい姿を想定して
大事にするのではなく、子どもの「今」が本当に大切なんだと
大事にする。「驚きの目」で子どもを見る。
世の中計画どおりにいくから素晴らしいんだとかではなくて、
道にあふれている、わからないことにあふれているからこそ、
大切なんだ、おもしろいんだと。そしてそれを育ててあげる。
――――――――
共感とは一緒にわからなくなってあげること。
あなたは何が本当に苦しいことなんでしょうかということを、
本当にわからないという思いでかかわることが大事で、
きっとこうなんでしょうという思いでかかわっていくのではない。
相手を理解したと思ったとたんに理解していないということになる。
同じように感じることが共感ということではない。
本当のことはわからないということを心のどこかにドスンともちながら
教わるように共に求めていくという思いでかかわることが、共感。
――――――――
子どもたちと共にいる大人たちが、子どもたちのお株を奪うかのように
真剣に一心不乱に物事に向き合う。「不思議だなぁ」「そうだったのか」
心の底から不思議がり、驚く。ときには悪戦苦闘する。
そんな大人たちの姿が子どもたちを巻き込み、自ら学んでいく機会になる。
――――――――
子どもの世界に入り、子どもから学び、おとな自身が生きている世界を
豊かにしていく。そんな大人の姿を見て子ども自身も自分の生きる世界を
豊かにしていく。
――――――――
2歳児クラスから進級してきた長時間保育の子どもたちが3歳児クラスに
進級すると、保育者は新入園の子どもたちの対応にとられることもあり
既存の関係が次第に強化され、固定化してしまったり
慣れた遊びばかり繰り返して新しいことにチャレンジする姿が
見られない状況が起こってくることもある。
――――――――
その子のことを“一生懸命に”考えているものの、
その子の「困っていること」に対して「こういう力を獲得すれば」等
知らず知らずのうちに私たちが「正解」と思ってしまっている「方法」を
提供することが先に立ってしまい、本当のその子のみている世界をともに
見ようとすることがどこかに置き去りにされてしまっているようにも思える。
THEY世界に身を置いたままで、「YOU的他者」になり得ていない。
――――――――
汐見稔幸さん
「私は自分自身が、誰かに教育されて育ったと思いたくない」
今の教育学がそのまま「発展」すると、人間が他人の育ちの過程に(上手に)干渉して、
その人が(密かに)目標に思っていることに沿って育てる技術がどんどん増え
細かくなっていきます。こういう人間はこう育てれば大丈夫……
それって、人間を操作する技術の進歩とどう違うのでしょう。
――――――――
子どもには適切な環境をつくるということにだけこだわって、
あとは子どもにまかせることが大切なのです。
子どもも自分で自分をつくりたいという根源的な欲求を持っている人間。
子どもは生まれるときも場所も親も、選べません、その無垢性にどう答えるか。
「人間としてみる」というときの視点の深さが出てくると思うのです。
――――――――
「イメージ化による学習」感情の働き。
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